Xiangyu Liu, RT*; Jiaxu Wei, RT*; Xi Zhao, MD**; Ji Wang, RT*
* 上海交通大学医学院附属仁済医院 放射線科(中国・上海)** シーメンスヘルスケア、中国
2025-08-06
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既往歴
59歳の女性患者が、6時間前に突然発症した頭痛、吐き気、嘔吐を訴えて入院した。患者にはステージ3の本態性高血圧の既往があった。従来型のエネルギー積分型検出器(EID)CTを用いてCT血管造影(CTA)を実施したところ、右内頸動脈(ICA)のC7部に嚢状動脈瘤が認められ、くも膜下出血を伴っていた。動脈瘤に対する血管内コイル塞栓術は問題なく施行された。経過観察のため、デュアルソース光子計数検出器(PCD)CT装置NAEOTOM AlphaでCTAを実施した。
診断
PCD-CTで撮影した経過観察CTA画像では、血管の描出、鮮鋭度、血管コントラストが改善していた。一方、コイル塞栓術後の動脈瘤周囲には金属アーチファクトが生じ、血管および実質構造の観察が妨げられていた。「Neuro coils」プリセットを用いた反復金属アーチファクト低減処理(iMAR)で再構成した画像では、これらのアーチファクトが効果的に低減され、視認性が向上した。動脈瘤は残存を示す所見なく完全閉塞していた。右ICA、前大脳動脈(ACA)、中大脳動脈(MCA)はすべて開存し、狭窄は認められなかった。患者は問題なく回復した。
図1:iMAR適用前の軸位画像(図1a)では、アーチファクトにより塞栓術を行った動脈瘤と隣接動脈の視認性が損なわれている。iMARで再構成した画像では視認性が明らかに改善している(図1b、矢印)。
図2:cVRT画像およびMPR画像に脳動脈の頭部像を示す。コイル塞栓術前にEID-CTで撮影した画像(図2a~2b)では、右ICAのC7部に動脈瘤が認められる(矢印)。iMARを適用せずにPCD-CTで撮影した術後画像(図2c~2d)では、金属アーチファクトにより動脈瘤および隣接構造の視認性が損なわれている(矢印)。iMAR画像では、残存を示す所見のない完全塞栓後の動脈瘤と、開存した右ICA、ACA、MCAが明瞭に描出されている(図2e~2f、矢印)。PCD-CT画像(図2c~2f)では、血管の描出、鮮鋭度、コントラストが改善している点に注目されたい。
コメント
破裂した頭蓋内動脈瘤(IA)は緊急疾患であり、直ちに治療する必要がある。血管内コイル塞栓術は、長期的な再出血リスクの予防を主な目的として、破裂したIAを閉塞するために日常的に行われている。再出血は予後不良につながり、罹患率および死亡率も高い。[1] 再出血は、動脈瘤の再開通または新生動脈瘤のいずれによっても起こり得るため、必要に応じて早期の予防治療を行えるよう、画像による経過観察が妥当である。[2] MRAは禁忌による制約があり、DSAは脳血栓塞栓症などの合併症の可能性を伴う侵襲的検査であることから、診断および経過観察にはCTAが広く用いられている。しかし、コイルによる金属アーチファクトによって画像の読影が困難になり、場合によってはデータセットを評価できなくなるという課題がある。この課題に対応するため、ビームハードニング補正、正規化サイノグラムのインペインティング、周波数分割を組み合わせ、微細な解剖学的構造を保持するiMARアルゴリズムが開発された。その後、補正処理を反復適用し、より精緻な補正結果を得る。[3] これにより金属アーチファクトが低減し、コイル塞栓術後の動脈瘤周囲の視認性が向上する。
本症例では、エネルギー分解CTデータを取得できるPCD-CT装置NAEOTOM Alphaを使用した。電子ノイズがなく、空間分解能とヨードコントラストが向上している。画像はスペクトル情報を含めて通常0.4 mmのスライスコリメーションで撮影され、低keV(本症例では55 keV)での仮想単色画像(VMI)表示が可能である。これにより画像コントラストがさらに高まり、血管の詳細が見やすくなる。画像再構成には専用の高鮮鋭カーネル(Hv56)を適用し、高コントラスト分解能と血管描出を向上させる。これらの高解像度画像は、シネマティックレンダリング技術(cVRT)を用いた立体的で詳細かつ実物に近い表示にも活用でき、脳神経外科医との情報共有や治療計画の策定に役立つ。
本症例が示すように、包括的なPCD-CT画像診断にiMAR技術を組み合わせることで、血管の描出と鮮鋭度を高め、血管コントラストを改善し、金属アーチファクトを低減できる。これは、治療済みIA患者の経過観察に有用である。本患者には経過観察のためのインターベンション治療は必要なかった。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 頭部 |
撮影モード | Quantumplus |
撮影範囲 | 161 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
撮影時間 | 0.8秒 |
管電圧 | 140 kV |
実効mAs | 38 mAs |
IQレベル | 105 |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 9.0 mGy |
DLP | 186 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
ピッチ | 0.8 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm |
スライス厚 | 0.4 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Hv56 |
keVレベル | 55 keV |
スペクトラル再構成 | Monoenergetic Plus |
造影剤濃度 | 370 mg/mL |
容量 | 40 mL + 生理食塩水40 mL |
注入速度 | 5 mL/s |
開始遅延時間 | 大動脈弓で100 HUに達した時点でボーラストラッキングを開始 + 3秒 |
画像提供:上海交通大学医学院附属仁済医院 放射線科(中国・上海)