Kolos Turtóczki, MD、Pál Maurovich-Horvat, MD, PhD, MPH、Ibolyka Dudás I, MD
ハンガリー、ブダペスト、センメルワイス大学医用画像センター
2025-07-23
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病歴
転倒後に負傷した33歳の女性患者が救急外来を受診した。到着時、意識状態の変化があり、右耳から目に見える出血と頭蓋骨右側の表在性血腫を認めた。当院の多発外傷プロトコルの一環として、さらなる評価のため、光子計数検出器(PCD)搭載CT装置(NAEOTOM Alpha.Prime)を用いて通常の頭部CT検査を実施した。
診断
CT画像では、薄いスライスの冠状断多断面再構成(MPR)において、典型的な「ブロークンハート」サインを伴うキヌタ骨・ツチ骨関節脱臼が認められた。軸位画像でも、ツチ骨頭がキヌタ骨体部および短脚から離れて転位し、正常な関節の「アイスクリームコーン」像が崩れている所見を認めた(図1)。拡大再構成画像では、これらの構造をさらに詳細に観察できた(図2)。乳突蜂巣、外耳道、中耳および耳小骨に及ぶ右側頭骨の縦骨折(図3a)に加え、蝶形骨体部の複雑骨折を認めた(図3b、3c)。側頭部硬膜下血腫、くも膜下出血、および反衝機序による左側脳実質の脳挫傷を認めた。頭蓋外の外傷性病変を示す所見はなかった。その後の経過観察CT検査では、挫傷性病変は安定しており、周囲浮腫は軽度に進行し、硬膜下血腫は縮小していた。緊急の脳神経外科的介入は不要と判断された。患者は集中治療室で2日間保存的治療を受け、その後、外傷病棟へ転棟した。耳鼻咽喉科(ENT)の診察では、右側の伝音難聴が認められた。
図1:軸位画像(図1a)では、右側でツチ骨頭がキヌタ骨体部および短脚から離れて転位している(矢印)。冠状断MPR画像(図1b)では、典型的な「ブロークンハート」サインが認められる(矢印)。薄いスライス(0.4 mm、Hr76シャープカーネル)で作成した2枚のcVRT画像(図1c、1d)により、キヌタ骨・ツチ骨関節脱臼を三次元的に示す(図1c)。
図2:拡大再構成画像では、関節が離開した「アイスクリームコーン」像(図2a)および「ブロークンハート」像(図2b)の所見を伴うキヌタ骨・ツチ骨関節脱臼(矢印)が詳細に示されている。
図3:cVRT画像では、乳突蜂巣および外耳道に及ぶ右側頭骨の縦骨折(図3a、矢印)と、蝶形骨体部の複雑骨折(図3b、3c、矢印)が認められる。
コメント
側頭骨外傷は救急外来でよく遭遇する。鼓室および鼓室蓋、耳小骨連鎖、骨迷路、顔面神経管、内頸動脈、頸静脈孔および静脈洞、さらに頭蓋内構造物は、いずれも損傷を受ける可能性がある。これらの解剖学的構造は特有の構成を持つため、的確で綿密な読影報告が必要である。これらの構造の損傷を見逃したり、診断が遅れたりすると、患者に重度かつ永続的な障害をもたらすことがある。[1] 耳小骨の脱臼や骨折によって伝音経路が断たれると、伝音難聴(CHL)を引き起こす可能性がある。側頭骨外傷から6か月後も、患者の50%に伝音難聴が残存する。耳小骨脱臼が最も多くみられる部位は、キヌタ骨・アブミ骨関節およびキヌタ骨・ツチ骨関節である。[2] 後者では、スプーン(ツチ骨頭)がコーン(キヌタ骨体部および短脚)から離れて転位し、軸位画像では正常な「アイスクリームコーン」像が、冠状断MPRでは典型的な「ブロークンハート」サインが崩れて見える。[3] [4] 側頭骨外傷では、CTが第一選択の画像診断法である。従来、頭部CT検査と側頭骨CT検査は別々に行われ、前者は低コントラストの大脳、後者は高コントラストの骨構造に重点を置いていた。本症例の撮影には、新たに開発された単一X線源のPCD CT装置、NAEOTOM Alpha.Primeを使用した。PCDの原理は、従来のエネルギー積分型検出器(EID)とは異なる。EIDではX線光子をまずシンチレーション光に変換し、次に電気信号へ変換する。一方、PCDではX線光子を直接電気信号に変換する。EIDでは検出器素子が物理的な隔壁で分離されているのに対し、PCDでは電場によって分離されている。また、PCDでは電子回路ノイズも除去される。こうした違いにより、X線光子の利用効率が高まり、画像ノイズおよび放射線量の低減が期待できる。さらに、PCDは検出器の画素サイズが小さく、部分容積効果やブルーミングアーチファクトの低減にも寄与する。その結果、空間分解能が向上し、耳小骨連鎖のような小さく高コントラストの構造を撮影する際に特に有用である。[5] 通常の頭部撮影で得た画像は、側頭骨の描出にはシャープカーネル(Hr76)を用いた0.4 mmスライス厚で、大脳の描出には標準またはスムーズカーネルを用いたより厚いスライス厚で再構成できるため、別々に2回撮影する必要がない。こうした高解像度画像から、シネマティックレンダリング技術(cVRT)を用いて三次元画像を作成することもでき、詳細で実物に近い可視化が可能となる。外傷診療において、通常撮影でも空間分解能が向上するPCD CTを用いることで、これまで高解像度CT(HRCT)検査でしか得られなかった診断的知見を放射線科医が得られる可能性がある。
検査プロトコル
装置 | NAEOTOM Alpha.Prime |
|---|
撮影範囲 | 頭部 |
撮影モード | Quantum |
撮影長 | 182 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 69秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 167 mAs |
IQレベル | 225 |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 28 mGy |
DLP | 554 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.35 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm |
スライス厚 | 0.4 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Hr76 |
画像提供:ハンガリー、ブダペスト、センメルワイス大学医用画像センター