Xiangyu Liu、RT*;Jiaxu Wei、RT*;Xi Zhao、MD**;Ji Wang、RT*
* 中国・上海市、上海交通大学医学院附属仁济医院 放射線科** Siemens Healthineers、中国
2025-07-02
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病歴
15歳の男性患者が、過去20日間に右額にできたしこりが大きくなってきたと訴え、検査のため来院した。それ以外に症状はなかった。特記すべき既往歴はなかった。身体診察では異常を認めなかった。評価のため、デュアルソース光子計数CT(PCCT)であるNAEOTOM Alphaを用い、超高解像度(UHR)スキャンモードで造影CT検査を実施した。
診断
CT画像では、66 mm × 65 mmの前頭側頭部腫瘤を認め、右眼窩、右前頭洞および皮下に突出していた。また、右側脳室を圧迫し、脳正中線と両側前大脳動脈(ACA)を左方へ、右中大脳動脈(MCA)を後方へ偏位させていた。右側頭骨鱗部および眼窩後外側壁には骨びらんを認めた。腫瘤は仮想単純画像(VNC)で均一かつ軽度高吸収を示し、55 keV表示の仮想単色画像(VMI)およびヨードマップで均一な造影効果を呈し、内部に複数の高吸収域を認めた。腫瘤周囲には低吸収域がみられ、浮腫が示唆された。眼窩内視神経は圧迫されていたが、浸潤は認めなかった。CT所見から髄膜腫が疑われた。さらなる評価のためMRIが推奨され、こちらでも髄膜腫が疑われた。鑑別診断としてリンパ腫も考慮されたが、CT、MRIのいずれにも典型的な所見はなかった。
その後、患者は腫瘤摘出術を受けた。病理組織学的および免疫表現型の所見から、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)陽性の未分化大細胞リンパ腫(ALCL)と診断された。患者は順調に回復し、2週間後に退院して、外来で定期的に経過観察を受けることとなった。
図1:0.2 mm UHR画像の冠状断(図1a)では、右側頭骨鱗部および眼窩後外側壁の骨びらん(矢印)が認められる。UHRデータからスペクトル情報を含む1 mmスライスを再構成し、55 keV表示のVMI(図1b)、VNC(図1c)、ヨードマップ(図1d)の冠状断を作成した。これらの画像では、前頭側頭部に広がる腫瘤が認められ、VNCでは均一かつ軽度高吸収、VMIおよびヨード画像では均一な造影効果を示し、内部に複数の高吸収域を伴っていた。腫瘤は右眼窩内に突出し、脳正中線を左方へ偏位させていた。
図2:斜位MPR画像では、腫瘍が右前頭洞および右眼窩内に突出し、眼窩内視神経を圧迫している。腫瘍辺縁と視神経との間の細い境界(矢印)は、標準スキャンで120 kVにて取得した画像に相当する70 keV表示のVMI(図2c)と比較して、0.2 mm UHR画像(図2a)および55 keV表示のVMI(図2b)でより明瞭に確認できる。
図3:0.2 mm UHRスライスから再構成したcVRT画像では、右側頭骨鱗部および眼窩後外側壁の骨びらん(図3a、矢印)、ならびに腫瘍への頭蓋外(図3b)および頭蓋内(図3c)の栄養動脈(矢頭)が詳細に描出されている。両側ACAは左方へ、右MCAは後方へ偏位している。
解説
中枢神経系(CNS)に発生する原発性ALCLは極めてまれである。小児や若年成人に発生する傾向があり、男性に多く、予後はALK陽性と関連する。ALK陽性ALCLは若年患者で良好な経過を示す。画像所見が非典型的なため、従来の画像検査のみでは診断や鑑別診断が難しく、特に本症例のように腫瘍が巨大で浸潤性の場合は困難を伴う。
PCCTが実現する高い空間分解能とスペクトル情報の独自の組み合わせにより、1回のUHRスキャンで取得した画像データを用いて、脳、血管、骨の構造を詳細に可視化できる。脳のVMIは通常、造影効果を高めるため低keV(55 keV)で表示する。VNC画像は、単純スキャンを行わなくても、マウスをワンクリックするだけで表示できる。日常診療では、画像読影時に利用できるInteractive Spectral Imaging(ISI)技術を用いて、VMI、VNC、ヨード画像をインタラクティブに切り替えられる。UHRモードでは、物理的な隔壁ではなく電場によって微小サブピクセルを定義し、それぞれを個別に読み出すことで空間分解能を高める。この方法により検出器の幾何学的線量効率が向上し、被ばく線量を増加させずにUHR撮像が可能となる。さらにPCCTでは、低エネルギーX線光子の重み付け低減、電子ノイズの不在、および本質的なスペクトル情報を組み合わせることで、コントラスト・ノイズ比(CNR)を最適化する。実用例として、0.2 mmのスライス厚で取得・再構成したUHR画像から、シネマティックボリュームレンダリング法(cVRT)を用いて臨場感のある三次元画像を作成できる。この極めてまれな症例では、画像診断と病理組織学的・免疫表現型の結果は異なっていたものの、詳細な可視化と提示により、脳神経外科医は術前計画の段階で症例の複雑さを理解することができた。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 頭部 |
撮影モード | UHRモード(Quantum HD)動脈相/静脈相 |
撮影範囲 | 194.6 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
撮影時間 | 2.4 s |
管電圧 | 140 kV |
実効mAs | 100 mAs |
IQレベル | 125 |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 24.3 mGy |
DLP | 526 mGy*cm |
回転時間 | 0.25 s |
ピッチ | 0.85 |
スライスコリメーション | 120 × 0.2 mm |
スライス厚 | 0.2 / 1.0 mm |
再構成間隔 | 0.2 / 0.7 mm |
再構成カーネル | Hv60 / Qr40、QIR 4 |
keVレベル | 55 keV |
スペクトル再構成 | VMI、ヨード、VNC |
造影剤 | 350 mg/mL |
容量 | 45 mL + 生理食塩水40 mL |
流量 | 5 mL/s |
開始遅延 | 1、動脈相:C4レベルの頸動脈に造影剤が現れた時点で、手動操作により撮影を開始。2、静脈相:動脈相終了から8秒後。 |