ヤン・バクサ教授(医学博士、博士)
チェコ共和国、プルゼニ、プルゼニ大学病院およびカレル大学医学部 画像診断法部門
2024年10月23日
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病歴
3か月前に冠動脈バイパス術(CABG)を3枝に施行された59歳の男性患者が、非特異的な症状を訴えて来院した。5年前に冠動脈ステント留置術を受けた既往があり、抗凝固療法を受けていた。グラフト、吻合部およびステントの開存性を評価するため、デュアルソース光子計数検出器CTであるNAEOTOM Alpha®を用いて、前向き心電図同期逐次CTスキャンを実施した。
診断
冠動脈CT血管造影(CCTA)画像では、冠動脈吻合部が3か所ある3枝バイパスグラフトが確認された。左鎖骨下動脈(LSA)近位部から起始する左内胸動脈(LIMA)グラフトは、左前下行枝(LAD)遠位部に端側吻合されていた。上行大動脈前壁から起始する右伏在静脈グラフト(SVG)が2本あり、上側のグラフトは主肺動脈の上を通り、LADの第1対角枝(D1)に端側吻合されていた。下側のグラフトはVESTデバイスによる外部サポートを備え、後下行枝(PDA)に端側吻合されていた。このSVGの中間部は細く見えた。遠位部には高度狭窄が2か所認められた。吻合部は開存していたが、狭窄していた。LIMAグラフトと上側のSVG、およびそれぞれの吻合部は開存しており、狭窄や閉塞の所見はなかった。LAD中部に留置されたステント内に低吸収域が認められ、ステント内再狭窄が示唆された。固有冠動脈の評価では、広範な石灰化が認められた。左冠動脈主幹部(LM)、LAD近位部および回旋枝(Cx)の左鈍縁枝には混合プラークが認められ、中等度狭窄(50~69%)を生じていた。D1近位部および右冠動脈(RCA)遠位部には高度狭窄(>70%)を生じる石灰化プラークが認められ、LM、PDAおよびRCAの第1近位鈍縁枝(RMA1)にも中等度狭窄が認められた。冠動脈は右優位型であった。心臓の構造異常を示す所見はなかった。
CCTA所見に基づき選択的冠動脈造影が検討されたが、患者に特異的な症状がなかったため、直ちには実施されなかった。
図1:シネマティックVRT画像(図1a)と曲面MPR画像(図1b)に、VESTデバイスを備えたPDA吻合SVGを示す。中間部は細く見える。遠位部には高度狭窄が2か所(矢印)認められる。斜位MPR画像には、開存しているものの狭窄したSVGとPDAの吻合部が示されている(図1c、矢印)。
図2:シネマティックVRT画像(図2a)と曲面MPR画像(図2b、2c)に、LIMAグラフトとLAD遠位部の開存した吻合部(図2a、2b、矢印)、およびSVGとD1の開存した吻合部(図2a、2c、点線矢印)を示す。
図3:シネマティックVRT画像(図3a)と、LAD(図3b)およびCxの左鈍縁枝(図3c)の曲面MPR画像に、広範な石灰化を示す。LM、LAD近位部およびCxの左鈍縁枝には、混合プラーク(矢印)による中等度狭窄も認められる。
解説
SVGはCABGで最もよく用いられる導管である。動脈導管と比べて閉塞率が高いことが、SVG使用の主な制約となっている。これまでの研究では、SVG不全の主な原因は内膜過形成であり、これは動脈循環の高い圧力に対する適応反応であることが示されている。SVG用の外部サポートであるVESTデバイスは、植込み後のSVG拡張を抑え、グラフト内の血流パターンを改善し、その後の内膜過形成の進行を抑制する機械的な方法として提案されている。[1] SVG不全は患者に重大な臨床的悪影響を及ぼす可能性があるため、開存性の経過観察が重要である。CCTAは非侵襲的であり、短時間の撮像で造影剤を1回投与するだけでグラフト全体を確実に描出できるため、CABG術後の評価にますます広く用いられている。本症例での課題は、VESTデバイスの金属支柱によるブルーミングアーチファクトや金属アーチファクトの影響を受けずに、グラフト内腔を描出することである。
PCD-CTは、電子ノイズがなく、固有のスペクトル情報を備えた高空間分解能のエネルギー分解CTデータを提供する。[2] 仮想単色画像(VMI)は低エネルギー(本症例では55 keV)で再構成・表示でき、造影効果を高めて血管内腔をより明瞭に描出できる。新しい再構成技術であるZeeFreeは、隣接する心周期の撮像間の移行部分について、再構成過程で非剛体位置合わせを行う。これを標準画像再構成に適用することで、撮像中の息止め不足、体動、不整脈によって生じる可能性のある位置ずれを補正・低減する。[3] さらに、デュアルソースCTの原理による66 msの高時間分解能を、VMIなどのスペクトル再構成でも実現し、改良型Quantum Iterative Reconstructionアルゴリズム(QIR)、最適化された画像再構成カーネル(Bv56)、高い空間分解能と組み合わせることで、ブルーミングや金属アーチファクトの影響を受けずに、VESTデバイス内のSVGにある2か所の高度狭窄を明瞭に描出できる。LIMAグラフト、VESTデバイスのないSVG、吻合部、ステントおよび固有冠動脈の評価も良好に行える。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮像範囲 | 心臓 |
撮像モード | Quantumplus |
撮像長 | 204 mm |
撮像方向 | 尾側から頭側 |
撮像時間 | 7.9秒 |
管電圧 | 140 kV |
実効mAs | 34 mAs |
IQレベル | 64 |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 13.8 mGy |
DLP | 332 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm |
スライス厚 | 0.4 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Bv56 QIR 4 |
keVレベル | 55 keV |
スペクトル再構成 | Monoenergetic Plus |
心拍数 | 60~62 bpm |
造影剤 | 350 mg/mL |
容量 | 60 mL + 生理食塩水50 mL |
注入速度 | 6 mL/s |
開始遅延 | テストボーラスのピーク時間 + 2秒 |
画像提供:チェコ共和国、プルゼニ、プルゼニ大学病院およびカレル大学医学部 画像診断法部門