Lili Száraz 医師、Pál Maurovich-Horvat 教授(医師、博士、MPH)、Bálint Szilveszter 医師(博士)
ハンガリー、ブダペスト、センメルワイス大学 医用画像センター
2024年7月10日
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病歴
非典型的な胸痛を訴える46歳の男性患者が来院した。喫煙歴や高血圧など、心血管リスクが高かった。5年前に非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を発症し、左冠動脈に対する3枝冠動脈バイパス術(CABG)と、右冠動脈(RCA)に対する薬剤溶出性ステント(DES)3本の留置を受けていた。当時、RCAへのバイパス術は適応とならなかった。患者はアスピリン、クロピドグレル、β遮断薬を含む薬物療法を受けていた。グラフト、吻合部およびステントの開存性を評価するため、CTによる経過観察が依頼された。そこで、デュアルソース光子計数検出器CT(PCD-CT)であるNAEOTOM Alpha®を用いて、超高解像度(UHR)冠動脈CT血管造影(CCTA)を実施した。CT撮影前に、メトプロロール(50 mg)を経口投与し、硝酸薬(0.8 mg)を舌下噴霧した。
診断
CCTA画像では、3か所の冠動脈吻合を伴う3本のバイパスグラフトが確認された。左鎖骨下動脈(LSA)から分岐する左内胸動脈(LIMA)グラフトは、左前下行枝(LAD)遠位部に端側吻合されていた。上行大動脈前壁から分岐する2本の右大伏在静脈グラフト(SVG)は主肺動脈の上を通り、LADの第1対角枝(D1)および中間対角枝(IM)に端側吻合されていた。すべてのグラフトと吻合部は開存しており、狭窄や閉塞の所見はなかった。RCAの起始部から中部にかけて、相互に接続したステント3本(直径3 mm、長さ71 mm)が認められ、ステント内再狭窄はなかった。
元の冠動脈には広範な石灰化が認められ、左主冠動脈(LM)および後下行枝(PDA)に中等度狭窄(50~69%)、近位LADに高度狭窄(70~99%)、中部LAD、近位および中部回旋枝(Cx)に閉塞がみられた。冠動脈系は右優位であった。細いCxは治療介入に適さないと判断された。心臓の構造的異常を示す所見はなかった。
CCTA所見に基づき、追加の侵襲的検査は不要と判断され、スタチン治療を強化するよう患者に勧められた。
図1:シネマティックVRT画像で、開存する3本のバイパスグラフトの全体像を示す。LIMAグラフトはLAD遠位部に吻合され(矢頭)、2本のSVGはLADのD1(矢印)およびIM(点線矢印)に吻合されている。ステント留置されたRCAも開存している。
図2:曲面MPR画像で吻合部の開存性を示す(矢印):LIMAとLAD遠位部(図2a~2b)、SVGとD1(図2c)、SVGとIM(図2d)。
図3:曲面MPR画像で、RCA内の相互に接続した3本のステントがステント内再狭窄なく開存していることを示す。主に石灰化プラークによる中等度狭窄がPDAに認められる。
解説
閉塞性冠動脈疾患の患者には、心筋血流の改善と症状の緩和を目的として、CABGや冠動脈ステント留置術が行われる。長期的な臨床転帰は、グラフト、吻合部およびステントの開存性に左右される。従来、グラフトの開存性評価には侵襲的冠動脈造影(ICA)が用いられてきたが、合併症のリスクがあり、技術的な困難も伴う。過去10年間で、CABG後の評価にCCTAがますます用いられるようになった。非侵襲的であり、短時間の撮影で造影剤を単回注入するだけでグラフト全体を確実に描出できるためである。[1] 従来型CTを用いた冠動脈ステントの開存性評価は、ガイドラインに基づく管理・治療にもかかわらず症状の変化がみられる患者に対する米国心臓協会のガイドラインでは、ステント径3 mmを境に限界があった。[2]
PCD-CTのUHRモードを用いた最近の研究では、侵襲的血管造影を基準として、冠動脈ステントの開存性評価で100%の陰性的中率が得られた。[3] この結果は、ステント画像診断におけるPCD-CTの性能向上の可能性を示している。デュアルソース方式による高い時間分解能(66 ms)と、PCD-CTがもたらす空間分解能の向上を組み合わせることで、最適な画質が得られ、ステントストラットや石灰化によるブルーミングアーチファクトを効果的に抑制できる。[4] 光子計数検出器では、個々の検出器素子を隔てる層によって光学的クロストークを防ぐ必要がない。各検出器ピクセルは強い電場によって画定される。そのため、シンチレーション検出器よりも微細な構造にでき、[5] 放射線量効率を損なうことなく小さなサブピクセルを実現できる。
本症例では、臨床医がUHR画像を用いて、3枝CABGのグラフトとステント、および元の冠動脈の開存性を適切に評価できた。治療対象となる病変が認められなかったため、追加の侵襲的精査は不要であり、患者は侵襲的冠動脈造影に伴うリスクや費用を回避できた。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 心臓 |
撮影モード | UHRモード(Quantum HD Cardiac) |
撮影範囲 | 226.8 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
撮影時間 | 13.4秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 61 mAs |
IQレベル | 64 |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 35.3 mGy |
DLP | 838 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
ピッチ | 0.18 |
スライスコリメーション | 120 × 0.2 mm |
スライス幅 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Bv64 QIR 3 |
再構成マトリックス | 1024 × 1024 |
心拍数 | 66~73 bpm |
造影剤 | 400 mg/mL |
容量 | 4相注入プロトコル:• 生理食塩水のみ 10 mL• 造影剤のみ 83 mL• 30 mL(造影剤40%、生理食塩水60%)• 生理食塩水のみ 50 mL |
注入速度 | 5 mL/s |
開始遅延 | 左心房で150 HUに達した時点から3秒後にボーラストラッキングを開始 |
画像提供:ハンガリー、ブダペスト、センメルワイス大学 医用画像センター