Muhammad Taha Hagar, 医学博士*;Tobias Krauss, 医学博士*;Constantin von zur Mühlen, 医学博士**;Fabian Bamberg, 医学博士、公衆衛生学修士*
*ドイツ、フライブルク大学放射線科
**ドイツ、フライブルク大学循環器科
2024年6月19日
PDFをダウンロード
病歴
非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を発症した48歳男性患者は、2年前に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受け、複数の冠動脈にステントが留置された。患者には冠動脈疾患(CAD)の従来の危険因子は認められなかった。この予期せぬ出来事は患者の生活に大きな影響を及ぼし、強いストレスやパニック発作を引き起こし、救急外来を何度も受診することになった。また、副作用のためスタチン治療を中止していた。比較的若年であること、また症状が心理面に及ぼす影響を考慮し、経過観察には侵襲的なカテーテル検査よりも非侵襲的な診断法が望ましいと判断された。そこで、新型のデュアルソース光子計数検出器(PCD)CT装置NAEOTOM Alpha®を用い、超高解像度(UHR)撮影モード(Quantum HD Cardiac)で冠動脈CT血管造影(CCTA)を実施し、冠動脈プラークの負荷と関連リスク、およびステントの開存性を評価した。CT撮影に先立ち、メトプロロール10 mgを静脈内投与し、ニトログリセリンを舌下に2回投与して患者を準備した。
診断
UHR CCTA画像では、径の異なる5本のステントがすべて開存していた*。内訳は、近位右冠動脈(RCA)に1本(4 mm)、遠位RCA後側壁枝に小径のステント1本(2.5 mm)、遠位左前下行枝(LAD)に連結したステント2本(3.5 mm)、遠位回旋枝(Cx)に大径のステント1本(3 mm)であった。いずれのステントにもステント内狭窄は認められなかった。近位RCAには非石灰化プラークが認められ、軽度狭窄(25~49%)を呈していた。また、近位および中部LADに、点状石灰化と陽性リモデリングを伴う高リスクプラーク(HRP)所見を有する非石灰化プラークが2つ認められ、いずれも軽度狭窄を呈していた。CT所見はCAD-RADS 2/P2/HRP/Sに分類された。急性症状がなかったため、追加の侵襲的精査は不要であった。
図1:曲面MPR画像では、径の異なる5本の開存ステントが確認できる。近位RCAに1本(4 mm)、遠位RCA後側壁枝に小径のステント1本(2.5 mm)(図1a)、遠位LADに連結したステント2本(3.5 mm)(図1b)、中部Cxに大径のステント1本(3 mm)(図1c)が認められる。遠位RCAの小径ステントを含め、すべてのステントに再狭窄の所見は認められない。近位RCAには軽度狭窄を引き起こす非石灰化プラーク(図1a、矢印)が認められる。近位および中部LADにも、軽度狭窄を引き起こす非石灰化プラークが2つ認められる(図1b、矢印)。ステントストラットと石灰化プラーク成分が視覚的に明瞭に区別できる点に注目されたい(図1c)。
図2:軸位画像と曲面MPR画像では、近位および中部LADに、点状石灰化と陽性リモデリングを伴うHRP所見を有する非石灰化プラークが2つ認められ(矢印)、軽度狭窄を引き起こしている。
図3:シネマティックレンダリング画像2点は、径の異なる5本の開存ステントの全体像を示す。近位RCAに1本(4 mm)、遠位RCA後側壁枝に小径のステント1本(2.5 mm)、遠位LADに連結したステント2本(3.5 mm)、中部Cxに大径のステント1本(3 mm)が認められる。近位RCA、近位LAD、中部LADには軽度狭窄が認められる(矢印)。
解説
CCTAは、低~中等度リスクの患者において閉塞性CADを除外するための不可欠な診断ツールである。[1] 既存のCADを有する患者への使用は一般により慎重であるが、米国心臓協会の最近のガイドラインでは、ガイドラインに基づく管理と治療を行っているにもかかわらず症状に変化がある患者について、内径3 mm以上のステントが留置されている場合には、ステント開存性を評価する意義が認められている。[2]
高度石灰化プラークやステント材に起因するブルーミングアーチファクトは診断上の課題であり、この状況におけるCCTAの有用性を制限してきた。[3] 新しいPCD-CT技術の導入は、こうした課題の克服に向けた大きな進歩である。この技術では、半導体内で入射X線光子を直接変換する。各検出器ピクセルは強い電場によって定義され、ピクセル間に隔壁を必要としないため、放射線量効率を損なうことなく小さなサブピクセルを実現できる。その結果、空間分解能が110 × 110 × 160 μm³に向上した画像撮影が可能となる。[4] こうした技術進歩の重要性は、従来のエネルギー積分型検出器(EID)CTと比べて、非侵襲的なステント評価においてPCD-CTがアーチファクトを低減し、画質を向上させる可能性を示した最近の研究によって裏付けられている。[5] 初期の臨床研究およびファントム研究では、特に鋭い血管用畳み込みカーネルを使用した場合、UHR PCD-CTによるステント評価で有望な結果が示されている。[6,7] この方法により、ステント内腔を生体内で最適に描出できるようになり、最近の研究では、参照基準として侵襲的血管造影を用いたステント開存性評価で、陰性的中率100%を達成した。[8]
本症例では、Quantum HD Cardiac CTの使用により、ステント開存性と冠動脈疾患を非侵襲的に評価でき、患者にとって有益であった。さらに、HRPの検出を受け、より積極的な予防的薬物療法が必要となる。スタチンに対する副作用を考慮すると、LDLコレステロールを効果的に低下させることが示されているPCSK9阻害薬やエゼチミブなどの代替薬を検討できる。[9] 治療対象となる病変は認められなかったため、追加の侵襲的精査は不要であった。患者が経験した非特異的な症状は、過去のCADの進行に起因する可能性は低いと考えられた。
まとめると、ステント留置患者を正確に評価できるPCD-CTの能力は、心臓画像診断におけるその価値を裏付けている。この信頼性の高い方法により、非侵襲的検査の活用が広がる可能性がある。PCD-CTの臨床導入、経験、科学的エビデンスが蓄積されるにつれて、診療のあり方を変え、臨床ガイドラインにも影響を与える可能性がある。
検査プロトコル
装置 | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 心臓 |
撮影モード | UHRモード(Quantum HD Cardiac) |
撮影長 | 129.6 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 7.6秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 59 mAs |
IQレベル | 79 |
線量調整 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 41.4 mGy |
DLP | 581 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
ピッチ | 0.16 |
スライスコリメーション | 120 x 0.2 mm |
スライス幅 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.1 mm |
再構成マトリックス | 1024 x 1024 |
再構成カーネル | Bv60 / Bv72(QIR Level 4) |
造影剤 | 370 mg/mL |
容量 | 80 mL + 生理食塩水50 mL |
注入速度 | 6 mL/s |
開始遅延 | テストボーラス |
画像提供:ドイツ、フライブルク大学放射線科