Adrian A. Marth, MD*,** Daniel Nanz, PhD*; Reto Sutter, MD**
* スイス筋骨格画像診断センター、Balgrist Campus AG、スイス・チューリッヒ
** チューリッヒ大学バルグリスト大学病院、スイス・チューリッヒ
2024年4月19日
病歴
粉砕脛骨骨折を呈した46歳の男性患者に、プレート固定術とロッキングスクリューによる偽関節再手術が行われました。6週間後、骨癒合の状態を評価するため、経過観察CT検査が予定されました。光子計数CT(PCCT)装置NAEOTOM Alpha®を用いて、スペクトルシェーピング(スズフィルター)を適用した超高解像度(UHR)モードで撮影しました。
診断
標準的な多色X線UHR画像では、インプラントによる金属アーチファクトが生じ、骨折線の描出が一部妨げられていました。120 keV、150 keV、190 keVで再構成した仮想単色画像(VMI)では、金属アーチファクトが大幅に抑制され、骨折線の視認性が向上しました。骨癒合の兆候は認められませんでした。脛骨および足部に斑状の骨減少が認められました。CT撮影後、患者には前腕支持型松葉杖を使用し、足にかける荷重を自身の体重の30%にとどめて歩行するよう指示されました。次回の経過観察検査のため、6週間後に再診する予定となりました。
図1:矢状断MPR画像では、多色画像(図1a)で金属アーチファクトにより一部見えにくくなっている骨折線(矢印)が、120 keV(図1b)、150 keV(図1c)、190 keV(図1d)で再構成したVMIでは明瞭に確認できます。骨癒合の兆候は認められません。
図2:シネマティックボリュームレンダリング画像(a~d)は、骨折した脛骨および腓骨に対するプレート固定とロッキングスクリューの3D全体像を示しています。
解説
術後のCT評価は、治癒過程で骨折が癒合しているかを確認するうえで重要です。この情報は、患者の可動性について、また遷延癒合や偽関節などの合併症がある場合に再手術が必要かどうかを判断するため、外科医にとって極めて重要です。光子不足やビームハードニングによってインプラントに生じる金属アーチファクトは、画像の判読性を著しく損なう可能性があります。スペクトルシェーピング(スズフィルター)と仮想単色画像(VMI)再構成を組み合わせることで、標準的な撮影と比べて線量効率を高めながら金属アーチファクトを低減できることが示されています[1]。スペクトルシェーピングでは、高コントラスト構造(骨や金属など)への寄与が小さい低エネルギー光子を除外し、さらにVMIによって平均光子エネルギーを高くすることで、ビームハードニングアーチファクトを低減します。PCCTではスペクトル情報を本来的に取得できるため、VMIを容易に再構成でき、日常的な画像診断に導入できます。さらにPCCTでは、検出器開口を狭めるための追加のコームやグリッドを使わずにUHR画像を取得できるため、線量効率を損なわずに空間分解能を向上できます。
本症例では、より高いkeV値(150および190 keV)で再構成したVMIで金属アーチファクトがよりよく抑制されています。ただし、画像コントラストが低下するというトレードオフを考慮する必要があります。120 keVで再構成したVMIでは骨折線が明瞭に確認でき、画像コントラストも良好に保たれています。視認性の向上により診断への確信が高まり、より適切な患者ケアにつながります。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 左下肢 |
撮影モード | UHRモード(Quantum HD) |
撮影長 | 428.5 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
撮影時間 | 3.5秒 |
管電圧 | Sn140 kV |
実効mAs | 97 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 3.5 mGy |
DLP | 150 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.86 |
スライスコリメーション | 120 x 0.2 mm |
スライス厚 | 0.2/0.4 mm |
再構成間隔 | 0.1/0.4 mm |
再構成カーネル | Br84/Br76, QIR 3 |
スペクトル再構成 | VMI(Monoenergetic Plus) |
画像提供:スイス筋骨格画像診断センター、Balgrist Campus AG、スイス・チューリッヒ