Muhammad Taha Hagar, MD;Christopher L. Schlett教授, MD, MPH;Fabian Bamberg教授, MD
ドイツ、フライブルク大学医療センター 診断・インターベンショナル放射線科
2024年2月26日
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病歴
心筋虚血および冠動脈疾患の家族歴がある64歳の男性患者が、運動中の非典型的な胸部不快感と安静時の動悸を訴えて来院した。血液検査ではコレステロール値は正常で、中性脂肪値がわずかに上昇していた(204 mg/dl)。最近実施された運動負荷心電図検査では、最大運動負荷時および運動負荷後の初期段階に心室性期外収縮が認められた。冠動脈疾患(CAD)の検査前確率が低~中程度であり、最新の国際ガイドラインに沿って[1]、症状の潜在的な原因として運動誘発性冠動脈不全を除外するため、Dual SourceフォトンカウンティングCT(PCCT)であるNAEOTOM Alpha®を用いて、超高解像度(UHR)モード(Quantum HD cardiac)による冠動脈CT血管造影(CCTA)を実施した。
診断
カルシウムスコアの評価では、Agatstonスコア1172、年齢・性別別の90パーセンタイルを超える、重度の冠動脈プラーク負荷(P4)が認められた。左前下行枝(LAD)近位部および右冠動脈(RCA)近位部に広範な石灰化が認められた。カルシウムによるブルーミングアーチファクトを抑え、空間的な詳細をより明瞭に描出するため、以降の冠動脈CT血管造影(cCTA)ではUHRモードを選択し、診断可能な画像が得られた。LADおよびRCA近位部には、高リスク所見を伴う混合プラークが2つ認められ、低吸収プラーク成分(<30HU)と陽性リモデリングを特徴としていた。LADおよびRCA近位部には軽度の冠動脈狭窄(25~49%)が認められた。左回旋枝(Cx)には非石灰化プラークが認められたが、狭窄はなかった。左心室の大きさは正常で、駆出率(EF)は69%と正常であり、肥大も認められなかった。CAD-RADS 2.0のコンセンサス声明[2]に基づき、本患者のcCTAはCAD-RADS 2/P4/HRPに分類された。その後、患者は外来の循環器専門医に紹介された。危険因子の修正、スタチンによる集中的な予防的薬物療法、および短期間での臨床経過観察が推奨された。
図1:カルシウムスコア撮影の軸位画像では、LAD近位部(図1a)およびRCA(図1b)に広範な石灰化が認められ、Agatstonスコアは1172となり、年齢・性別別の90パーセンタイルを超えている。
図2:冠動脈の曲面多断面再構成画像(MPR、0.2 mm)では、LAD(図2a)およびRCA(図2b)近位部に非閉塞性狭窄(<50%)が認められる。広範な石灰化があるにもかかわらず、明瞭な内腔が描出され、目立ったブルーミングアーチファクトの影響はみられない。LADおよびRCA近位部には、高リスク所見を伴う混合プラークが2つ認められ、低吸収プラーク成分(<30HU)と陽性リモデリングを特徴としている。Cx(図2c)には非石灰化プラークが認められるが、狭窄はない。
図3:3次元シネマティックレンダリング画像では、LADおよびRCA近位部の石灰化プラークが青色で強調表示されている。レンダリングに用いた画像は、鋭いカーネルBv64を用いて0.2 mmで再構成されている。
解説
従来「不安定プラーク」と呼ばれていた高リスクプラーク(HRP)は、点状石灰化、低吸収プラーク(<30 HU)、陽性リモデリング、「ナプキンリングサイン」を特徴とし、狭窄の重症度とは独立して、将来の急性冠症候群(ACS)および病変特異的な虚血のリスク上昇と関連する。HRPはCAD-RADSの推奨に修飾因子として取り入れられており、非閉塞性病変を含め、HRPの特定によってより積極的な予防治療が必要であることが示唆される。[2] 研究によると、重大な心血管有害事象(MACE)を引き起こす責任プラークの半数は、過去に狭窄率が50%未満だったプラークに由来する。[3] 患者管理においては、より正確な患者個別のリスク層別化が極めて重要である。本症例では、コレステロール値の上昇や重度の冠動脈狭窄がなくても、広範な冠動脈石灰化、患者の年齢および家族歴を考慮すると、まずスタチン療法が適応となる。ただし、HRPが確認されたため、より綿密な臨床経過観察と、病変特異的なプラーク進展を評価する画像モニタリングが必要であり、患者および病変に応じた標的型アプローチへと管理方針を変更することが求められる。
CT画像でHRPの特徴を特定するには、最適な空間分解能と時間分解能に加え、石灰化プラークによるブルーミングアーチファクトを最小限に抑えることが必要である。本症例では、撮影にスライスコリメーション120 × 0.2 mm、画像再構成に鋭いカーネル(Bv64)を用いるUHRモードを適用した。これは現在、PCCTでのみ利用できる特別な撮影モードである。[4] 近年の臨床研究では、広範な石灰化がある場合でも、このモードを冠動脈評価に用いることで、優れた成功率と診断精度が得られることが報告されている。[5] さらに、Quantum逐次近似再構成を最大強度(QIRレベル4)で適用することで、画像ノイズが低減し、画像の鮮明度が向上する。
本症例が示すように、UHRモードによるCCTAは、重度の冠動脈石灰化がある場合でも、患者の心臓の健康状態に関する重要な情報を提供する。医師はHRPを特定し、閉塞性冠動脈疾患を除外できる。Quantum HD cardiacによって得られる優れた画質により、CT所見は患者のリスク層別化や管理方針の決定に役立つ。本患者はCT評価後に侵襲的血管造影を受ける必要がなかったため、それに伴う費用を削減できた。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 心臓 | 心臓 |
撮影モード | カルシウムスコア、Turbo Flashモード | CCTA、UHRモード |
撮影範囲 | 138 mm | 124.5 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 0.18秒 | 8.8秒 |
管電圧 | 90 kV | 120 kV |
実効mAs | 12 mAs | 48 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D | CARE Dose4D |
CTDIvol | 0.85 mGy | 29.9 mGy |
DLP | 16.7 mGy*cm | 421 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 | 0.25秒 |
ピッチ | 3.2 | 0.15 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm | 120 x 0.2 mm |
スライス厚 | 0.2 mm | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm | 0.1 mm |
再構成カーネル | Bv40 | Bv64、QIR 4 |
再構成マトリックス | 512 x 512 | 1024 x 1024 |
心拍数 | 47 bpm | 51 bpm |
造影剤 | 該当なし | 370 mg/mL |
容量 | 該当なし | 85 mL + 生理食塩水49 mL |
注入速度 | 該当なし | 6 mL/s |
開始遅延 | 該当なし | テストボーラス |
画像提供:ドイツ、フライブルク大学医療センター 診断・インターベンショナル放射線科