Fides Regina Schwartz医学博士、Timothy Amrhein医学博士
米国ノースカロライナ州、デューク大学医療システム 放射線科
2024年1月12日
PDFをダウンロード プロトコルを見る
病歴
片頭痛、耳鳴り、起立性頭痛が10年続く58歳の女性患者が、精査のため神経放射線科に紹介された。症状は特発性頭蓋内圧低下症(SIH)に典型的であり、造影脳MRIで硬膜増強、静脈拡張、脳の下垂が認められ、診断が確定した。3年前に原因となる脊髄脳脊髄液静脈瘻(CVF)の特定を試みたが、成功しなかった。確定治療に先立ちCVFの特定と位置の確認を行うため、超高解像度(UHR)スキャンモード(Quantum HD)を用いて、デュアルソースフォトンカウンティングCT(PCCT)であるNAEOTOM Alpha®にてCTミエログラフィ(CTM)を実施した。
診断
エネルギー積分型検出器(EID)CTでスライス厚0.625 mmにて撮影した過去のCTM画像では、複数のレベルに目立つ脊髄神経根袖が認められたものの、CVFは特定できなかった(図1a)。今回の検査では、腰椎穿刺によりイオパミドール(300 mg/mL)10 mLをくも膜下腔に注入した後、安静時、吸気終末息止め時、およびバルサルバ手技中に、左側臥位、右側臥位、腹臥位で、PCCTによりスライス厚0.2 mmのUHR CTM画像を撮影した。吸気終末時のUHR画像では、右T5レベルから生じる原因病変であるサブミリメートルサイズのCVFが、隣接する傍脊椎静脈内の造影剤によって確認された(図1b)。ヨードマップ(図1c)およびシネマティックボリュームレンダリング法(cVRT)で作成した3D画像(図1d)により、さらに明瞭に確認できた。このCVFを特定し位置を確認できたことで、患者は確定治療として外科的結紮を受けるため脳神経外科に紹介された。手術は成功し、症状は消失し、SIHを示す脳MRI所見も正常化した。
図1:T5レベルでEID CTによりスライス厚0.625 mmで撮影した軸位画像(図1a)では、脊柱管の右側に目立つ神経根袖が認められる(アスタリスク)。CVFは確認できない。PCCTによりスライス厚0.2 mmで撮影したUHR画像(図1b)では、目立つ神経根袖(アスタリスク)と、同じレベルにCVF(矢印)が認められる。ヨードマップ(図1c、0.4 mm)および薄いスラブのcVRT画像(図1d)では、同じ位置にCVF(矢印)が示されている。
解説
CVFは、脊髄くも膜下腔と隣接する傍脊椎静脈との間に生じる異常な交通である。こうした異常な交通により、脳脊髄液(CSF)が静脈系へ制御されずに流出し、最終的に頭蓋内圧低下を引き起こす。CVFが認識されるようになったのは比較的最近だが、SIH患者における脊髄CSF漏出の一般的な原因として急速に注目されており、特に初回の脊髄画像検査で明らかな漏出が確認できない場合に重要である。
CVFは胸椎に最も多く認められ、特にT7からT12までの下位レベルに多い。ただし、本症例のように上位胸椎レベルにも生じることがある。上位腰椎または下位頸椎レベルの瘻孔は比較的まれである。CVFは解剖学的に神経根袖と関連し、瘻孔による交通は、本症例のように神経根袖自体から生じることが多い。症例集積研究の中には左右差の傾向を示唆するものもあるが、その根拠は強くなく、CVFは脊椎の左右どちらにも生じうる。
頭蓋内圧低下の最初に報告された原因である硬膜裂傷とは異なり、ほとんどのCVFでは硬膜外腔にCSFが貯留しない。硬膜外液の貯留がないため、従来の解剖学的画像検査でCVFを検出するのは困難である。その可視化には、CSFに特異的なミエログラフィ用造影剤が必要となる。そのため、硬膜外CSF漏出の検出によく用いられる標準的な脊椎MRIではCVFの特定は困難であり、CTMがより優れた画像診断法として用いられるようになった。EID CT装置では、放射線量を増やしたり過剰な画像ノイズを許容したりせずに空間分解能を高めることが従来の課題だった。PCCTの登場により、これが可能になった。EID CTの場合のように、検出器開口を狭めて線量効率を低下させるコームやグリッドなどの追加ハードウェアを使わなくても、線量効率を損なわずにUHR画像を取得できる。本症例で示すように、従来の薄切アプローチを用いたEID CTでの前回撮影ではCVFは確認できなかったが、今回はPCCTに搭載された標準のUHRモードにより、放射線量を79%低減しながらCVFを特定できた(PCCTで8.6 mGy、EID CTで41.3 mGy)。画像再構成では、モデルベースの逐次近似再構成法であるQuantum Iterative Reconstruction(QIR)を適用し、画像ノイズをさらに低減している。UHR画像とスペクトラル情報(解像度はやや低下するものの)を組み合わせられる点はPCCT独自の特長であり、同一データからUHR形態画像と化学組成情報を含むスペクトラル画像(ヨードマップ)を得られる。本症例では、スペクトラル情報から作成したヨードマップにより、UHR画像で確認されたCVFの視認性がさらに高まり、診断への確信が得られた。視認性の向上は、医師が確信を持って診断し、適切な治療計画を立てるうえで役立つ。患者は長年の頭痛から解放された。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 脊椎 |
スキャンモード | UHR(Quantum HD) |
撮影範囲 | 354 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
患者体位 | FFDR(足側から入室・右側臥位) |
撮影時間 | 7.6秒 |
管電圧 | 140 kV |
実効mAs | 74 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 8.58 mGy |
DLP | 341 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.85 |
スライスコリメーション | 120 x 0.2 mm |
スライス厚 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Br48u、QIR 4 |
造影剤 | イオパミドール(300 mg/mL) |
容量 | 10 mL |
注入速度 | 手動注入 |
画像提供:米国ノースカロライナ州、デューク大学医療システム 放射線科