フノル・シュークシュド医学博士、エーヴァ・ユハースRT
センメルワイス大学医療画像センター(ハンガリー、ブダペスト)
2023-06-30
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病歴
10年前に両側のアブミ骨切除術とアブミ骨プロテーゼ挿入術を受けた74歳の女性患者が、過去2年以上にわたって左側の伝音難聴が徐々に悪化していると訴えて来院した。評価のため、超高解像度(UHR)スキャンモードを用いたCT検査を実施した。
診断
CT画像では、両側にピストンワイヤープロテーゼ(PWP)が認められた。右側のPWPは正常な位置にあり、一端はキヌタ骨長脚に掛かり、もう一端は卵円窓に固定されていた。また、右中耳内の耳小骨より下方に、2本目のPWPが確認された。左側のPWPは脱臼しており、ループがキヌタ骨長脚から外れ、反対側も卵円窓から離れていた。両側に耳硬化症が認められた。
その後、患者は左側の再手術を受ける予定となった。右側の2本目のPWPは、10年前の挿入失敗により誤って残されたものと考えられた。患者は右側にまったく症状がなかったため、摘出を目的とした鼓室形成術による再手術は予定されなかった。
図1:斜位MPR画像では、両側に長さ3 mmのPWPが認められる(図1a、1b)。右側のPWP(図1a、矢印)は正常な位置にあり、左側のPWP(図1b、点線矢印)は脱臼している。蝸牛近傍の骨にわずかな透亮像があり、両側の耳硬化症が認められる(図1c、1d、矢印)。
図2:cVRT画像では、両側のPWP、耳小骨、蝸牛が示されている。右側のPWP(図2a、2c、2e、2g、矢印)は正常な位置にあり、一端はキヌタ骨長脚に掛かり、もう一端は卵円窓に固定されている。右中耳内の耳小骨より下方には、2本目のPWP(矢頭)も認められる。左側のPWP(図2b、2d、2f、2h、点線矢印)は脱臼しており、ループがキヌタ骨長脚から外れ、反対側も卵円窓から離れている。cVRT画像の作成に使用した軸位画像は、非常にシャープなHr84カーネルを用い、0.2 mmで再構成したスライスであることに留意されたい。
解説
アブミ骨は中耳の耳小骨のうち最も内側にある骨である。底板が卵円窓をふさぎ、振動を蝸牛へ伝える。耳硬化症は異常な骨リモデリングであり、アブミ骨の動きを妨げ、伝音難聴を引き起こすことがある。アブミ骨切除術では、アブミ骨をプロテーゼに置き換えることで、この症状を改善できる。側頭骨の高解像度CT検査は、術前診断と術後経過観察の両方に日常的に行われている。高解像度CTにより、中耳内のプロテーゼの位置を確認できる。しかし、薄い金属ワイヤーは部分容積効果により検出が困難である。[1]
本症例の撮影には、光子計数型検出器(QuantaMax™)を搭載した新開発のデュアルソースCTスキャナー、NAEOTOM Alphaを使用した。電子ノイズのない、空間分解能が向上したエネルギー分解CTデータを取得できる。[2] スライスコリメーション120 x 0.2 mmのUHRモードを使用し、検出器のサブピクセル(アイソセンターで0.15 x 0.18 mm²)を個別に読み出す。ピクセル間に物理的な隔壁はなく、4 x 6個のサブピクセルごとにコリメーターグリッドで区切られている。そのため、UHRモードでも検出器の放射線量効率を最大限に維持できる。さらに、X線光子を計数する際、電子ノイズフロアを大きく上回る所定のデジタル閾値を設定することで、電子ノイズを排除している。改良型の反復再構成技術(Quantum Iterative Reconstruction、QIR)を用いて、画像の鮮鋭度やノイズの質感を損なうことなく、超高解像度画像のノイズを効率よく低減する。この組み合わせ、すなわちノイズ低減と、線量効率を最大限に保った超薄スライス画像により、空間分解能の向上による解剖学的構造の視認性向上だけでなく、シネマティックボリュームレンダリング(cVRT)による解剖学的詳細の写実的な3次元表示も可能となる。本症例で示すように、非常にシャープなHr84カーネルを用いて0.2 mmで再構成した画像からでも、長さわずか3 mmのPWPを驚くほど詳細に描出できる。CT所見はプロテーゼの脱臼を明瞭に示し、進行性の難聴の原因を説明するとともに、耳科医が適切な再手術計画を立てるのに役立つ。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 側頭骨 |
スキャンモード | UHRモード |
スキャン長 | 60 mm |
撮影方向 | 尾側から頭側 |
スキャン時間 | 1.5秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 91 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 15.5 mGy |
DLP | 120 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.85 |
スライスコリメーション | 120 x 0.2 mm |
スライス幅 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.1 mm |
再構成カーネル | Hr84 |
画像提供:センメルワイス大学医療画像センター(ハンガリー、ブダペスト)