ハテム・アルカディ教授(医学博士)
スイス、チューリッヒ大学病院 診断・インターベンショナル放射線科
2023年3月10日
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病歴
重度の症候性低流量・低圧較差大動脈弁狭窄症を有する62歳の男性患者に、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)が予定されました。患者の冠動脈石灰化負荷が高かったため、手技前に超高解像度(UHR)スキャンモードを用いて冠動脈CT血管造影(cCTA)を実施しました。
診断
カルシウムスコア評価では、アガットストンスコアが1,188で、年齢・性別別の90パーセンタイルを超えていました。cCTA画像は、標準解像度カーネルBv40を用いて0.6 mmで再構成した画像(参照画像)と、よりシャープなカーネルBv60を用いて0.2 mmで再構成した画像(UHR画像)を作成しました。石灰化プラークによる右冠動脈(RCA)近位部の狭窄が認められたため、参照画像とUHR画像の両方を用いて血管内腔を評価しました。参照画像では中等度の狭窄(面積狭窄率84%、径狭窄率60%)が認められた一方、UHR画像では軽度の狭窄(面積狭窄率61%、径狭窄率38%)と判定されました。血管内腔の描出と狭窄度の評価に影響する石灰化プラークのブルーミング効果は、UHR画像で明らかに軽減されていました。左冠動脈主幹部(LM)および左前下行枝(LAD)の石灰化プラークによるその他の狭窄もUHR画像で評価し、径狭窄率はいずれも50%未満でした。その後、UHR画像評価によるcCTAの結果は、侵襲的カテーテル冠動脈造影で確認されました。冠動脈血行再建は不要と判断され、患者は良好な結果のもとTAVRを受けました。
図1:曲面MPR画像(図1a、1b)では、石灰化プラークによるRCA近位部の狭窄(矢印)が認められます。画像はカーネルBv40を用いて0.6 mm(図1a)、カーネルBv60を用いて0.2 mm(図1b)で再構成されています。狭窄部で血管中心線に垂直な対応する軸位断面を、左下に示しています。血管内腔の描出と狭窄度の評価に影響する石灰化プラークのブルーミング効果は、UHR画像で明らかに軽減されています。侵襲的カテーテル冠動脈造影(図1c)では、UHR画像評価の結果と一致するRCA近位部の軽度狭窄(矢印)が確認されました。
図2:参照画像(図2a)およびUHR画像(図2b)を同じプリセットで再構成したcVRT画像では、石灰化プラーク、狭窄(矢印)、小血管の三次元描出の違いが示されています。カーネルBv60を用いて再構成した厚さ0.2 mmのUHR画像も、画像ノイズが低減されているため、最適な画質のcVRT画像作成に使用できる点にご注目ください。
解説
冠動脈疾患が疑われる患者の診断では、cCTAは優れた感度と陰性的中率を示しています。しかし、冠動脈の石灰化負荷が高い患者では、依然として評価が困難です。高度な石灰化があると、カルシウムのブルーミングにより内腔狭窄の輪郭が不明瞭になり、狭窄度が過大評価されることがあります。この問題を克服するには、部分容積効果を低減する空間分解能の向上が望まれます。[1] 本症例は、光子計数検出器(QuantaMax™)を搭載した新開発のデュアルソースCTスキャナー、NAEOTOM Alphaで撮影されました。電子ノイズ床を大きく上回る位置にあらかじめデジタルしきい値を設定し、X線光子を計数することで電子ノイズを除去し、空間分解能を向上させたエネルギー分解CTデータを取得できます。その結果、画像ノイズが低減されます。[2] cCTAスキャン用にUHRモードがあらかじめ設定されており、スライスコリメーションは120 × 0.2 mmです。このモードでは、検出器サブピクセル(アイソセンターで0.15 × 0.18 mm²)の信号を個別に読み出します。サブピクセル間に物理的な隔壁はありません。散乱線を低減するため、4 × 6個のサブピクセルからなる各グループをコリメーターグリッドで囲んでいます。これにより、検出器の幾何学的線量効率を損なわずに空間分解能が向上し、プラークの特徴や血管内腔をより明瞭に描出できます。画像再構成時にモデルベースの逐次近似再構成法であるQuantum Iterative Reconstruction(QIR)を適用すると、画像ノイズをさらに低減できます。画像ノイズが低減されるため、シネマティック・ボリュームレンダリング(cVRT)などの三次元再構成にもUHR画像を使用でき、解剖学的詳細を写真のようにリアルに描出できます。
本症例が示すように、cCTA検査で光子計数CTが提供するUHRモードでは、ブルーミング効果を抑え、鮮鋭度を高めて石灰化した冠動脈を描出できます。冠動脈石灰化負荷の高い患者の冠動脈狭窄を評価する際、医師の判断への確信を高める可能性があります。また、冠動脈血行再建の判断は狭窄度に左右されるため、患者の治療方針にも影響を与える可能性があります。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影部位 | 心臓 |
スキャンモード | 後ろ向き心電図同期
ヘリカルモード |
撮影範囲 | 145 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 5.5秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 58 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 28.8 mGy |
DLP | 471 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
ピッチ | 0.26 |
スライスコリメーション | 120 × 0.2 mm |
スライス厚 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | Bv40/Bv60、QIR4 |
心拍数 | 74 bpm |
造影剤 | 370 mg/mL |
注入量 | 三相注入: - 造影剤原液 55 mL
- 55 mL(造影剤20%、生理食塩水80%)
- 生理食塩水原液 20 mL
|
注入速度 | 5.5 mL/s |
開始遅延時間 | 上行大動脈で100 HUに達した時点でボーラストラッキングを開始し、さらに5秒後 |
画像提供:スイス、チューリッヒ大学病院 診断・インターベンショナル放射線科