アンデシュ・ペーション教授(医学博士、博士)*;リリアン・ヘンリクソン(理学修士)**、***
* リンショーピング大学 医学部/放射線科 医用画像科学・可視化センター(CMIV)、スウェーデン、リンショーピング
** リンショーピング大学 医用画像科学・可視化センター(CMIV)、スウェーデン、リンショーピング
*** リンショーピング大学 保健・医療・介護科学部 放射線科、スウェーデン、リンショーピング
2023年2月10日
PDFをダウンロード
病歴
重度肥満(体重300 kg)の60歳女性患者が、左脚に広範囲の丹毒、レンサ球菌による敗血症および急性腎不全を発症し、入院した。既往歴には、レボチロキシン補充療法中の甲状腺機能低下症と乾癬があった。治療後、血清クレアチニン値は34 μmol/Lとなり腎機能は正常化し、全身状態も改善した。胸部X線検査で、右肺門部の高さに直径23 mmの境界明瞭な円形病変が認められたが、その性状は明らかでなかった。精査のため、造影胸部CTおよび腹部CTが依頼された。
診断
CT画像では、右中葉に直径17 mmの小さく境界明瞭な円形病変が認められ、造影効果はなかった。また、右下葉に区域性無気肺を認めた。気管支閉塞を示す所見はなかった。偶発所見として胆嚢結石が1個認められた以外、その他の画像所見に異常はなかった。肺病変は良性と判断された。
図1:軸位断画像(0.5 mm)では、右中葉に造影効果のない小さく境界明瞭な円形病変(矢印)が認められる。右下葉に区域性無気肺(点線矢印)を認める。
図2:冠状断MPR画像(図2a、2b、0.5 mm)では、右中葉に造影効果のない小さく境界明瞭な円形病変(矢印)が認められる。軸位断画像(図2c、点線矢印)では、高吸収の輪を伴う直径約1 cmの円形胆石が認められる。0.5 mmスライスで再構成したcVRT画像(図2d)では、肺病変(矢印)と胆石(点線矢印)がともに三次元で描出されている。
解説
肥満および高度肥満患者の割合は増加している。[1] 患者の体径が大きくなると、光子の減弱や散乱が増加し、画像ノイズは指数関数的に増加する。そのため、関連する病的状態における解剖学的構造の視認性はそれに応じて低下する。これは画像読影を困難にし、放射線検査の再実施や追加の臨床検査につながる可能性があり、累積放射線量と費用の増加を招く。X線の統計ノイズだけを考慮した場合、画像ノイズを半減させるには線量を4倍にする必要がある。電子ノイズが相当量存在する場合は、さらに状況が悪化する。したがって、画像ノイズの低減には放射線量の増加が伴い、X線管の出力を高める必要がある。X線束と管出力を最大化する従来の方法は、ピッチを下げて回転時間を長くすることである。しかし、これらの方法ではスキャン速度が遅くなり、息止め時間が長くなるため、動きによるアーチファクトが増加しやすい。近年、従来型検出器CTは大きく進歩したものの、肥満患者はいまなおCT検査が難しい対象群である。
本症例の検査には、光子計数検出器(QuantaMax™)を搭載した新開発のデュアルソースCTスキャナー、NAEOTOM Alphaを使用した。この装置は、電子ノイズのないエネルギー分解CTデータを提供する。[2] 電子ノイズ床を大幅に上回る位置にあらかじめ設定したデジタル閾値を用いてX線光子を計数することで、電子ノイズを排除し、画像ノイズを低減するとともに、放射線量の低減も期待できる。検出器に入射するX線束が低い場合、たとえば低線量CTや肥満患者のCTでは電子ノイズが支配的になるため、電子ノイズがないことは画質向上に特に大きな効果をもたらす。もう一つの重要な進歩は、造影CTにおけるコントラスト対ノイズ比(CNR)の向上である。これは、低エネルギーX線光子の重み付けが低下しないためである。画像再構成では、モデルベースの逐次近似再構成法であるQuantum Iterative Reconstruction(QIR)を適用し、画像ノイズをさらに低減する。これらすべての改善により、画像ノイズと放射線量の両方が低減される。たとえば、シネマティックボリュームレンダリング技術(cVRT)を用いれば、厚さわずか0.5 mmのスライスでも、細部まで鮮明な三次元画像を表示できる。本症例では患者の体重が300 kgであったにもかかわらず、CTスキャンに必要な電流は314 mAにとどまった。これは単一X線管の最大出力(120 kVで1,000 mA)の3分の1未満であり、医師が確信を持って診断を下すのに役立つ最適な画質が得られた。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 体幹部 |
撮影モード | QuantumPlus |
撮影長 | 719 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 10秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 262 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 20.6 mGy |
DLP | 1,540 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.6 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm |
スライス厚 | 0.8 mm |
再構成間隔 | 0.5 mm |
再構成カーネル | Qr40 |
造影剤 | 350 mg/mL |
量 | 113 mL + 生理食塩水30 mL |
注入速度 | 3.8 mL/s |
開始遅延時間 | 70秒 |