マルティーヌ・レミー=ジャルダン教授(医学博士、博士)*;ジャック・レミー教授(医学博士)**
* フランス、リール大学病院センター 胸部画像診断科
** フランス、ヴァランシエンヌ病院センター 放射線科
2023年1月13日
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経過
53歳男性。喫煙歴(45 pack-years)があり、過去10年間にわたり、軽度の喀痰を伴う咳とともに呼吸困難が徐々に悪化していた。慢性閉塞性肺疾患(COPD)、GOLD分類3、重度肺気腫および肺過膨張と診断された。右上葉(RUL)に肺気腫病変が優位に分布していたため、気管支内バルブ(EBV)留置による気管支内肺気腫治療が検討された。この介入治療は、肺容量を減少させ、同側の横隔膜運動を改善し、ひいては患者の呼吸状態を改善することを目的としている。EBV治療の対象はRULであった。処置後の評価のため、超高精細(UHR)胸部CTが適応となった。
診断
EBV留置前の胸部CTでは、右主裂および右副裂が完全であることが確認され、側副換気がないことを確認するための重要な情報が得られた。EBV留置から3か月後に撮影したCT画像では、右肺尖部、後区域および前区域の区域気管支に3つのバルブが留置され、対応する気管支が閉塞していた。右主裂が上方および前方に偏位し、RULが完全に無気肺となっている像が確認された。両肺には多数の低吸収域が認められ、肺気腫が不均一に分布していることが示された。
EBV治療により、呼吸困難の軽減や6分間歩行試験の成績向上など、患者の転帰に良好な効果が認められた。
図1:EBV留置前の冠状断MPR画像(図1a)では、両肺に低吸収域がみられ、RULに優位な分布を示しており、重度肺気腫が示唆される。EBV留置後の画像(図1b)では、RULが完全に虚脱している。VRT画像(図1c)では、RULの気管支が途絶している(矢印)。
図2:EBV留置前の矢状断MPR画像(図2a)では、右主裂および右副裂が完全であることが示されている。EBV留置後の同じ断面(図2b)では、右主裂が上方および前方に偏位し、RULが完全に無気肺となっている(矢頭)。
図3:cVRT画像(図3a~3c)および斜位MPR画像(図3d~3f)では、右肺尖部、後区域および前区域の区域気管支に3つのバルブが留置され、RULが完全に虚脱している。cVRTとMPRの画像はいずれも、0.2 mmの低線量UHR画像から再構成されている。
解説
肺気腫はCOPDの主な病型の一つであり、長期的な呼吸障害と気流制限を特徴とする進行性の肺疾患である。根治はできないものの、症状の管理に役立つ治療法が複数あり、EBV留置もその一つである。この治療は、肺機能、運動耐容能、生活の質を効果的に改善するなど、患者の転帰に良好な効果をもたらすことが示されている。[1] [2] [3] EBV治療の適応を判断するには、肺気腫の分布を詳細に分析するとともに、治療対象葉の無気肺を妨げる可能性のある側副換気がないことを確認する必要がある。[4] これらの情報はすべて、処置前の胸部CT検査で得られる。処置後の胸部CTでは、バルブが適切な位置に留置されていることを確認し、バルブによって生じた葉性無気肺を評価する。
この症例では、光子計数検出器QuantaMax™を搭載した新開発のCT装置NAEOTOM Alphaを使用した。電子ノイズがなく、空間分解能が向上したエネルギー分解CTデータを取得でき、スペクトル情報と組織コントラストも向上する。[5] X線スペクトルを最適化する特殊なスズフィルターを使用した、低線量UHRスキャンモードを適用した。UHRモードでは、120 x 0.2 mmのスライスコリメーションを採用し、サイズ0.15 x 0.18 mm²(アイソセンターにおける)の検出器サブピクセルを個別に読み出す。ピクセル間に物理的な隔壁はなく、4 x 6個のサブピクセル群がコリメーターグリッドで区切られている。これにより、検出器の幾何学的線量効率を損なうことなく空間分解能が向上し、低被ばく線量でのCT画像において解剖学的構造をより明瞭に描出できる。さらに、電子ノイズフロアを大きく上回る所定のデジタルしきい値を設定してX線光子を計数することで電子ノイズが除去され、画像ノイズが低減し、被ばく線量の低減も期待できる。電子ノイズはX線量が少ない場合に特に支配的となるため、その除去は画質を向上させる低線量胸部CT撮影においてとりわけ効果的である。胸部CTにおけるもう一つの重要な改善点は、低エネルギーX線光子の重み付けが弱められないため、コントラスト対ノイズ比(CNR)が高いことである。画像再構成では、さらなるノイズ低減のため、モデルベースの逐次近似再構成法であるQuantum Iterative Reconstruction(QIR)を適用する。画像ノイズが低減されることで、低線量UHR画像(0.2 mm)も、シネマティックボリュームレンダリング(cVRT)などの三次元再構成に使用でき、解剖学的詳細を写実的に可視化できる。
この症例で示されるように、胸部CT画像は、EBV治療前の患者選択と治療後の経過観察評価に重要な役割を果たす。従来、高分解能(HR)画像は薄いスライスでのノイズ低減に必要な高線量と結び付けられていたが、現在では低線量でUHR画像を取得でき、必要な画像の細部を得られる。
検査プロトコル
スキャナー | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 胸部 |
撮影モード | UHR + Sn |
撮影長 | 355 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 3.7秒 |
管電圧 | Sn140 kV |
実効mAs | 55 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 1.98 mGy |
DLP | 73.1 mGy*cm |
回転時間 | 0.25秒 |
ピッチ | 1.0 |
スライスコリメーション | 120 x 0.2 mm |
スライス幅 | 0.2 mm |
再構成間隔 | 0.2 mm |
再構成カーネル | BI60, QIR4 |