Nicholas H. Shaheen, MD*; Maxwell Stroebel, MD*; Cynthia Welsh, MD**; Barry Gibney, DO***; Andrew D. Hardie, MD*
* サウスカロライナ医科大学 放射線科・放射線科学部門(米国サウスカロライナ州チャールストン)
** サウスカロライナ医科大学 病理学部門(米国サウスカロライナ州チャールストン)
*** サウスカロライナ医科大学 外科学部門(米国サウスカロライナ州チャールストン)
2022年10月28日
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病歴
食道切除術を10年前に受けた既往のある75歳男性が、左上腹部に放散する急性発症の心窩部痛、胸痛、排便停止、および多数回の嘔吐を訴えて救急外来を受診した。身体診察では発汗と頻脈が認められ、上腹部に筋性防御がみられた。検査結果は乳酸値3.0 mmol/L、推算GFR > 60、白血球数11であった。評価のため、造影剤を用いた腹部・骨盤CT検査を直ちに実施した。
診断
CT画像では、左横隔膜の欠損部を通って胸腔内に脱出した、拡張した小腸ループが複数認められた。通常の方法で再構成した画像では、脱出した腸管ループの壁内に薄い高吸収縁が認められたが、粘膜の造影効果(虚血がないことを示唆)か、粘膜下出血(梗塞を示唆)かは判別できなかった。スペクトラル画像データを評価すると、ヨードマップ上で脱出腸管ループ内に造影効果がまったく認められず、梗塞と一致していた。腸管壁の高吸収域は仮想単純画像(VNC)にも認められ、粘膜下出血が示唆された。追加のスペクトラル情報に基づいて小腸梗塞と診断し、患者は小腸切除術のため速やかに手術を受けた。切除腸管の病理学的評価では、全層にわたる出血性血液成分と粘膜の脱落を伴う、腸管の完全壊死が確認された。患者は良好な転帰を得て回復した。
図1:VRT画像の冠状断では、小腸ループ(矢印)が左胸腔内に脱出している。
図2:造影軸位画像(図2a)では、脱出した腸管ループの壁内に薄い高吸収縁(矢印)が認められる。この所見はVNC画像(図2b)にもみられるが、ヨードマップ(図2c)には認められず、梗塞と一致する粘膜下出血を示唆する。
解説
腸管梗塞とは、腸管の一部に生じる血流障害を指す。本症例のように、手術歴のある患者では、解剖学的構造の変化により後天性横隔膜ヘルニアに続発して発症することがある。初診時の身体診察所見や検査値異常などの臨床所見は、通常、非特異的である。しかし、腸管壁の初期壊死から最終的な敗血症や多臓器不全に至るまでの経過は急速な場合がある。治療は外科的処置となることが多く、迅速な診断には画像検査が重要である。近年では、迅速に実施でき、精度も高いことから、CTが従来の血管造影に大きく取って代わっている。CT画像では、虚血性腸管は非虚血性腸管と比べ、濃度や造影効果が異なることが多い。しかし、画像所見が微妙なため見過ごされることがあり、不必要な遅れや誤診につながる可能性がある。本症例で腸管壁に認められた薄い高吸収縁は、血流が保たれた腸管における正常な粘膜造影と解釈された可能性がある。しかし、VNC画像に存在し、ヨードマップでは認められないことから、梗塞と判断できる。スペクトラル情報を加えることで読影者の確信度が高まり、臨床所見や検査値も考慮することで迅速な診断が可能となる。患者が速やかに治療を受けるためには、これが不可欠である。CT検査には、光子計数検出器を搭載した新開発のCT装置、NAEOTOM Alphaを使用した。この装置は、電子ノイズを伴わずに高い空間分解能のエネルギー分解CTデータを提供する。[1] 通常の撮影でスペクトラル画像データを利用できることは、ワークフローにおける大きな改善点の一つである。マウスを1回クリックするだけで、従来のCT画像読影からスペクトラル画像読影に切り替えられるため、診断情報をより効率的かつ迅速に評価できる。本症例が示すように、スペクトラルCTはヨード感度情報を加えることで、腸管梗塞の検出における従来のCTの限界を補える可能性がある。これにより、出血と真の造影剤取り込み、すなわち血液灌流を、特徴的な画像所見に基づいて鑑別できる。
検査プロトコル
装置 | NAEOTOM Alpha |
|---|
撮影範囲 | 腹部/骨盤 |
撮影モード | QuantumPlus |
撮影長 | 426 mm |
撮影方向 | 頭尾方向 |
撮影時間 | 7秒 |
管電圧 | 120 kV |
実効mAs | 161 mAs |
線量変調 | CARE Dose4D |
CTDIvol | 12.6 mGy |
DLP | 584 mGy*cm |
回転時間 | 0.5秒 |
ピッチ | 0.8 |
スライスコリメーション | 144 x 0.4 mm |
スライス厚 | 3.0 mm |
再構成間隔 | 3.0 mm |
再構成カーネル | Br36 |
スペクトラル再構成 | VNC、ヨードマップ |
造影剤 | 350 mg/mL |
容量 | 94 mL + 生理食塩水39 mL |
注入速度 | 3 mL/s |
開始遅延時間 | 腹部大動脈で100 Huに達した時点でボーラストラッキングを開始
+ 5秒 |
画像提供:サウスカロライナ医科大学 放射線科・放射線科学部門(米国サウスカロライナ州チャールストン)